◆かかし◆ロバート・ウェストール/福武書店
かかし
見返しの作品紹介文を読んで、ファンタジーがかったホラーなのかと思いきや。
どっちかというと、大人になりきれない少年が、人間の汚さや身勝手さに、嫌悪感を抱き、そんな感情(彼はそれを「悪魔」と呼んでいる)に振り回されて疲れ果て、本心では自分を見て欲しい、家族として受け入れて欲しい・・・
という風な・・・陳腐な言葉になってしまいますが、いわゆる思春期メインの話でした。
でもホラー。・・・サスペンス?
自分がそういった時代からだいぶ離れてしまったせいか;最近、この手のものは、あまり読まないんですけど、
この作品はかなり面白かった!
後半に行くまで、ホラー要素が現実なのか、サイモンの妄想なのか分からないところとか、
訳者の金原瑞人氏も、あとがきで書かれていますが「う〜ん、すごい」のひと言です。
そして、とにかく、心理描写がスゴイ。
他人を(ひょっとしたら自分自身も)否定して生きている、というような、主人公の年頃(はっきり書かれていませんが)にはありがちな心が、後からじわじわくるように、巧みに表現されています。
(ので、友人のトリスのことも、始めは嫌いなんだと思っていた私。)
唯一信頼を寄せていた母親に、裏切られたことがきっかけとなって、「悪魔」を呼び寄せてしまうサイモン。
父親に、いくら救いを求めても、応えが得られることもなく。
心が血を流していることを、歪んだ形でしか現すことが出来ず、誰にも理解を得られない。
ひとり、「悪魔」を否定する感情と、迫る恐怖と対決するラストは、痛々しいほどでした。

そして表紙絵がスゴイです!かかしが3体描かれているんですが、中央のかかしの顔が、恐ろしい。
夕空を背景に、影の落とされた表情は、一見して分かりにくいのですが、そこがまた!
良く見ようと、目を凝らすと、かかしもこちらを見据えてくるのです。大げさでなく、ホントに!
借りてくるのに一瞬躊躇したくらいです。この表紙、ホントすごい・・・。
お陰で自分の絵にかかし描き込む気が失せたり。
久々のヒットでした。読後、気持ちが高揚して眠れませんでした(^!^;)。

アップで*

←せっかく大きく描いたので。おまけ(^!^;画像、とにかく重くてスミマセン・・・。
画質落すと色が変わるんです・・・。
上の絵も重くてスミマセン・・・。
背景、カブ畑なんですけど・・・見えない・・・。
最初、夏の日差しを表現しようと、鮮やかな色で描いたのですが。
全然ホラーっぽくなくなったので;腐った畑色になってしまった*
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